イラスト:Freepik

「養生訓」にみる養老、老人の生き方

貝原益軒が書いた「養生訓」は、「こころとからだの養生」「心身一如」を説いている。

病気になってから医者に行くのではなく、病気にならないように普段の「養生」が大切だと説く。

江戸時代に書かれたものだが、現代にも十分通用する「養生訓」は健康のバイブルである。

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巻第八【養老】

 養老、雑事は減らすこと

年老いると余命も長くないと慮るので、心配事も若い時とは変わってくる。

心静かに、雑事を減らし、人との交際を少なくすることも、老人の気を養う方法である。

 楽しく従容として

老後は、若いときの十倍もの速さで月日が流れるように感じる。

無駄な日を過ごすことがあってはならない。

心を静かに従容として残された日々を楽しみ、怒ることなく、欲を少なくして健康に気を配る。

老後の一日は千金に値すると子はいつも心掛けねばならない。

 晩節の自制

老いて子に養われるようになると、若いころから一緒にいる人に対して怒り易くなる人も多い。

欲が深くなり、子を責め、人を咎めて節度がなくな心を乱す人は少なくない。

自制して、怒りと欲をこらえ、人を責めたりせず、残された日々を楽しみたい。

子としては、これを念頭において父母を怒らせることのないよう、日ごろから気を配らないといけない。

父母を怒らせるのは大きな不幸。

自分の不孝を親に咎められて、耄碌(もうろく)したなどと人に言うなど、最も親不孝なことである。

 人を咎めない

老人の保養は、何よりも元気を大切にして気力を減らさないこと。

呼吸を静かにしてゆっくり話し、言葉少なにして起居・歩行も静かにするのが良い。

荒々しい言葉で、早口、声高に張り上げるのはいけない。

怒らず、心配事を思い悩むことなく、人の昔の過失を咎めてはならない。

また自分の過ちをいつまでも後悔しないこと。

人の無礼な振る舞いなどを、怒ったり恨んだりしてはいけない。

これはみな老人の養生の道であり、徳を積む方法でもある。

 気を減らさないために

老いると気が少なくなる。

気を減らすことを避けなければならない。

第一に怒ってはならない。

憂い、悲しみ、泣き、嘆かないこと。

葬儀に関わらせてはいけない。

死者の家族を訪ねさせたり、思い過ごさせてもいけない。

最もいけないのは、話し過ぎること。

早口、声高、高笑いなどは避ける。

長い距離を歩き過ぎたり、早足で道を歩かないようにする。

重いものを持ち上げてはいけない。

これらはすべて、気を減らさないための注意である。

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 老人が食べてはいけないもの

老人が特に食べてはいけないものがある。

生で冷たいもの、堅いもの、

脂っこいもの、消化しにくいもの、

こげて乾いたもの、古いもの

臭いものなどは食べてはいけない。

甘・酸・かん・苦・辛の五味の

偏ったものは、美味しくても多くは食べてはいけない。

夜食は特に注意が必要で、控えておいたほうが賢明である。

楽しく過ごす

老いてからは、一日を十日と思って毎日を楽しむこと。

一日も無駄にしてはいけない。

自分の思い通りにならなくても、凡人だからもっともだと思い自分の子弟をはじめ人の過失を許し、咎めたりしないこと。

世の中とはこうしたもんだと思って、憂い悩んだりしないこと。

毎日を楽しまないで、怒ったり恨んだりして過ごすのはもったいない。

たとえ貧乏だったとしても、不平不満ばかりで、道義にもとる人間にはなりたくないものだ。

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参考文献:「養生訓」貝原益軒著

東京大学名誉教授 木村正三郎解説

やずや編集部 訳